〒530-0054
大阪市北区南森町1丁目2番25号 南森町アイエスビル4階
TEL. 06-6363-5356 FAX. 06-6363-5358
E-mail. info@tenjin-law.jp

トップへ 事務所概要・弁護士紹介 取扱業務 費用 アクセス Our fellows
コラム

あけましておめでとうございます。弁護士の丸橋です。
 昨年の新年のご挨拶から、更新しないまま1年がすぎてしまいました。
 本年はきちんと更新して、事務所からの情報発信をしたいと思っています。

さて、当事務所では、本年1月から、新しく一津屋香織弁護士を迎えました。
 現在の法科大学院には、大学時代に法学部だった方を対象にした既修コース(2年)と、法学部以外であった方を対象にした未修コース(3年)があります。
 一津屋弁護士は未修コースの出身です。
 法科大学院の制度の一つの大きな目的は、法学部出身者以外からの多様な人材を法曹界に迎えようというものであり、一津屋弁護士は、法科大学院、新司法試験制度を体現する人材といえます。

さて、話を変えて、同族会社の相続対策についてお話したいと思います。
 ここで同族会社というのは、閉鎖会社つまり株式を公開していない会社という意味で使用しています。
 同族会社の相続対策という場合、相続税対策という場合と、将来の経営権の確保(経営権争いの予防)という場合があります。
 現実には、後者の場合も相続税の問題が影響することが多いのですが、話の都合上、別々に説明いたします。

1.まず、相続税対策ですが、通常の相続税対策との大きな相違は、同族会社の株が相続財産となることです。
 被相続人が同族会社の支配株主であった場合、その相続人はその後同族会社の支配権を得ることになります。その意味で同族会社の株式は支配権の源泉として重要な価値があります。
 しかしながら、このような価値があると言いましても、この株式という財産は金銭に替えることができません。会計上、税務上は金銭評価される財産なのですが、その会社をM&Aで取得しようとする人以外には、売却することは事実上できません。
 そのため、株式を相続する方は、相続税法上大きな財産を相続することになるため、多額の相続税を負担する一方、通常の相続のように相続財産の一部で相続税を支払うことが難しくなる場合があります。
 相続発生後にこれに対応する方法は、概略次の二つの方向になります。
 一つは、株式を相続する方に、納税のための他の財産特に金融資産を相続させることです。
 株式以外に多額の相続財産があり、他の相続人が協力してくれる場合は、この方法で問題はありません。
 しかし、株式以外にはめぼしい相続財産がない場合は、そもそもこの方法がとれませんし、他に多額の相続財産がある場合も、他の相続人が法定相続分に見合った遺産分割を主張する場合は、やはり難しくなります。
 もう一つは、株式を相続人間で株式を分配し、相続人各自が相続税を負担することです。
 しかしながら、会社の経営に関与しない相続人にとっては、株式はほとんど価値のない財産です。評価額に見合った株式配当がある会社などはほとんどありません。
 そうしますと、会社経営に関与しない相続人にとっては、無価値の財産に税金を支払うだけですので、協力してもらうことは困難です。
 また、株式が分配しますと、相続人間といってもいつ争いが起きて経営権の行方が不透明にならないとも限りません。
 このように、相続発生後には多くの困難が予想される場合が多いわけです。
 以前、相続税対策のコラムで、ほとんどの方が相続税の心配をする必要がないと書きましたが、同族会社でかつその株式の評価が高い会社(つまり経営状態のいい会社)につきましては、相続税対策をとる必要があります。

2.この場合の相続税対策は、株式の評価を下げることと、相続発生前に全部又は一部の株式を相続人予定者に移転する、の二点になります。
 現実には、この二つは関連して利用することがあります。
 株式の評価を下げる方法は、簡単にいえば損を出すことです。
 株式の評価は会社の規模等により算定方法がことなりますので、どの程度の効果になるかはケースバイケースですが、損が出れば評価が下がることには間違いがありません。
 ただし、損を出すと言いましても、本当に損失が発生するのは考えものです。
 以前の相続税対策のコラムでお話しした通りです。
 この場合の損とは、会社の会計上、税務上の損ではありますが、会社、被相続人、相続人を併せて考えますと、損にはならないことが必要です。
 よく利用されるのが、被相続人などに代表者などから退職してもらい、退職金を支払うという方法です。
 退職金につきましては、所得税上退職金控除等がありますので、無税又はかなり低い税額で財産を会社から個人に移転することができます。そして退職金額は会社の経費(損金)になりますので、その分会社財産は減少し、株式の評価額が減少するわけです。
 次に株式の移転ですが、株式は財産ですので、その移転には、売買の場合は譲渡所得税、贈与の場合は贈与税が発生します。
 これらで多額の税金が発生すると相続税対策の意味がありませんので、通常使用されるのは、贈与税の基礎控除内の贈与です。
 ただ、贈与税の基礎控除は年110万円ですので、効果は少ないといえます。
 ここで利用を考えるのが相続税精算時課税制度を利用した贈与です。
 これはおおざっぱに言えば、親が子供に2500万円の範囲で贈与し、贈与時点では課税されず、相続発生時に贈与された財産を相続財産に引き戻して計算して相続税を課税するという制度です。
 結局、相続時には相続税が課されるのですから、一体何が得かと思われる方がいるかもしれません。
 この場合、相続税課税時の贈与財産の評価は贈与時点の評価になります。
 前述のように、退職金等の支払いがあればその会計年度末の会社の決算は悪くなります。その会計年度終了後の株式の評価は下がります。その下がった時点で2500万円の範囲で贈与をしてしまうわけです。
 次の会計年度からはもう退職金が経費になりませんので、株式の評価は元に戻っていきます。つまり、一時的に株式の評価を下げ、その下がった時点で相続時精算課税制度を利用して2500万円の範囲内で贈与をして、将来の相続時の株式の評価を低い時点で固定してしまうわけです。
 私が現実に行った例では、ある決算期に退職金の支給とともに、不良資産の処分を一斉に行って大きな損失を計上したうえで、同決算期終了後に株式の精算課税制度を利用した贈与を複数の相続人予定者に行い、翌期に被相続人が会社に対して有していた貸付金を放棄してもらって会社財産を回復した(放棄による利益は、前期の繰越欠損で消しました)ことがあります。
 つまり大きな損失を出して評価を下げたうえで株式を低い評価で固定して贈与し、その後債権放棄で会社に大きな利益を出して会社財産を回復させたわけです。
 会社会社の状況がありますので、この例が他の会社でそのまま利用できるわけではありません。ただ、基本的な考え方はこのように株式の評価を下げ、そして低い評価の時に株式を移転させるということになります。

3.本来この後で、経営権争いの予防等に入る予定でしたが、すでにかなりの分量になってしまいましたので、それは次の機会にお話ししたいと思います。

丸橋 茂

ページの先頭へ戻る