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コラム

弁護士の丸橋です。
 平成26年1月から新しく加茂和也弁護士が当事務所に加わりました。
加茂弁護士は、神戸法科大学院(つまり神戸大学のロースクールです)の出身の26歳の若者です。
 当事務所では久しぶりの男性の新人弁護士です。
 当事務所は、性別、学歴、年齢、司法試験の成績等よりも、当事務所での試験、面接結果を重視して(というよりほとんどそれだけを判断材料にして)採用活動をおこなっていました。
 こういう選考活動をしていますと、実は女性の方が優秀なことが多く、そのため、当事務所は女性の採用が多かったのですが、久しぶりに男性の採用になりました。
 当事務所では、一津屋弁護士が5年目、村岡弁護士が4年目を迎え、ますますたくましくなってきていますが、加茂弁護士も強力な先輩女性弁護士二人に鍛えられて成長することを期待しています。

ところで、当事務所は昨年被害者側の医療事件を担当し、医療機関側に全面的な過失があることを認めさせた和解を成立させました。
 医療事件訴訟としては病院側で1件経験がありましたが、患者側としては初めてでした。
 もっとも、訴訟に至らない交渉事件は3件くらい(医療機関側と患者側を含め)あり、また事件になると想定しての相談事件(医療機関側)も3件くらいありますし、医療事件以外で医学的な点が問題になる事件は多数あります。
 私自身は医療事件が特殊な事件とは考えていませんし、現実に医療事件を担当して、医療に関する知識等は要求されますが(それはいずれのジャンルでも同じですので、医師などの専門家の協力を求めます)、法律上は通常の事件であると確認しました。

医療事件は、要は医師及び医療機関の専門家としての対処が適正だったかの問題ですが、実は医師以外の専門家が関与したまたは受任して行った行為に関して、その行為が適正であったかが法律的に問われることもよくあります。
 一般的な用語ではないかと思いますが、こういった事件を専門家責任又は専門家責任訴訟と呼ぶ傾向にあります。
 ただし、医師の場合は医療過誤、建築の場合は建築紛争などと呼ばれて、大阪地裁ではそれぞれ専門部がありますので、実際に専門家責任という場合は、弁護士、司法書士、税理士などのいわゆる士業の責任を問う場合を指すことが多いようです。
 医療事件につきましては、あらためてお話しする機会を持ちたいと思いますが、今回は上記の弁護士等の範囲での専門家責任についてお話ししたいと思います。

私自身は、弁護士及び税理士の専門家責任の原告事件を担当したことがあり、いずれも弁護士及び税理士の責任が認められています。
 また行政書士の被告事件も担当しました。
 司法書士については担当したことはありませんが、いくつかの事例は聞き及んでいます。
 これ以外にも、弁護士会の活動として、市民窓口相談(依頼した弁護士や相手方弁護士に対する苦情相談)や綱紀委員会(弁護士の不祥事としての懲戒申し立てに対して、懲戒委員会《刑事事件に比較しますと裁判所に相当》に送付するかの決定を担当します。検察庁に相当。)を担当しています。

これらを通じて、専門家責任が成立するか否かのポイントは以下の通りだと考えます。

1 結果責任ではない。   
 これは当然のことだと思いますが、たとえば訴訟で敗訴した(医療訴訟でいえば治療がうまくいかなかった)という結果だけで責任を問われることはありません。   
 専門家は成功を請け負う者ではありません。

2 法律判断の過失の判断基準   
 わかりやすくてよくあるのが、弁護士の期間徒過です。   
 たとえば、控訴期限内に控訴しなかったために敗訴判決が確定した、依頼を放置したために相続放棄の期間が経過した又は相手方に消滅時効が完成した、などです。   
 法律的に表現しますと、専門家(たとえば弁護士)として注意義務を怠ったかということです。   
 上記の期間徒過の場合は、注意義務違反は判断しやすいのですが、それ以外の場合はその判断が難しいことがあります。   

 たとえば、依頼を受けた段階で訴訟等の方針を考えますが、現実にはその段階で弁護士が把握できる資料は限られていますので、その後の相手方の反論及び反証を経た判決時点とは判断の前提となる事実関係、証拠関係が異なっています。
 医療行為の場合も同じで、特に救急医療の場合、その時点で把握できる資料は限られていますが、その限られた資料で早急に判断して治療行為を行わざるをえません。
 このような場合に、事後的に判明した事実関係、資料を基にして、当時の判断の是非を問うことはできません。

 もう一つは、仮に判断当時の事実関係、資料を基にしたとしても、とりうる方針・手段が複数ある場合です。
 提出できるすべての資料が提出されたはずの訴訟終結時点でさえも判決の帰趨がわからない事件が相当数ありますが、それ以前の時点であればなおさらです。  医療行為に置き換えても同じです。
 ある一つの方針をとることが法律家、医療機関として常識的であるという場合ももちろんありますが、現実にはありうる複数の手段が考えられ、どの手段が妥当であったかはやってみなければわからないということは珍しいことではないと思います。
 もちろん、ありうる手段以外の手段をとった場合は、その不適切な選択行為の責任はあります。   
 問題はその手段がありうる手段の範囲内か否かです。
 これは会社の経営者責任の考え方と共通していると思います。

3 調査義務   
 これは前記の手段・方針の判断の前提になるものです。   
 たとえば、債権の消滅時効の期間徒過を見逃したことの前提として、債権の発生、弁済等の事実関係を把握していたかという問題があります。   
 これらの事実関係がはっきりと示されているのにかかわらず見逃せば、過失があると通常考えられます。   
 しかしながら、弁護士が相談されている段階では、これらの事実関係が相談者・依頼者から示されていないことはよくあります。   
 その場合に、弁護士が消滅時効の可能性を考えてどこまで事実関係を聞き出し、また調査する義務があるかという問題です。   

 たとえばAという方にお金を貸してBという方が保証人になっていて、Aが行方不明だからBから分割で支払ってもらっていたが、半年前から支払いが止まったのでBを訴えたいという相談があったとします。   
 Aも訴えてほしいという依頼はありません。   
 この場合、Bの保証債務自体の消滅時効は問題になりません。   
 半年前の返済で時効が中断しているからです。   
 しかしながら、Aに消滅時効が成立する場合、BはAの消滅時効の成立を理由に返済を拒むことができます。   
 そうすると、弁護士としてはAに対する相談はありませんが、Aに対する消滅時効がどうなっているかを調べる必要があります。   
 もしAに対する消滅時効の完成時期が迫っているのであれば、速やかにAに対する時効中断の手続きをとらなければなりません。   
 それを行わなかったため、Aに消滅時効が完成し、Bに請求することができなくなった場合、相談時点又は依頼を受けた時点で、Aの消滅時効の可能性を考えて、Aの消滅時効の起算点、中断事由の有無などの事実関係を調査する義務があったのではないかという問題です。

4 説明義務   
 これは特に医療訴訟で近時問題とされるポイントです。   
 医療行為には多い少ないは別として、必然的にリスクが伴います。   
 さきほども記載しましたように、選択しうる医療行為又は手段・方針が複数ある場合(医療行為を行わないという選択も含みます)、医療機関側としてはそれぞれの効果及びリスクを説明したうえで患者側に選択を求め、又は特定の手段・方針をとることの同意をとる必要があります。   
 この説明を怠り、リスクのある医療行為を選択し、その医療行為が原因で被害が発生した場合、医療機関側は責任を問われることがあります。   
 つまり、きちんとした説明をうけていれば、患者側はそのような医療行為を選択せず、被害が発生しなかった、ということになります。   
 現在、医療機関ではある程度のリスクがある医療行為を行う場合は、必ず患者側にリスクの説明を行い患者が説明をうけたうえでその医療行為に同意した旨の書面を徴収しています。   
 それはこのような説明義務違反を回避するためです。   
 同様の問題は弁護士等の専門家責任においても同様です。   

5 損害と因果関係   
 この点はあまり認識されていないようですが、弁護士過誤、医療過誤を含む専門家責任では重要なポイントになります。   
 さきほど、控訴期間の徒過という例をあげました。   
 これは弁護士の過失が認められやすい(というか、原則過失ありです)例ですが、実はこの過失を原因として当該弁護士に対して損害賠償請求が行われた裁判例をみますと、ほとんどが原告敗訴(つまり賠償責任なし)になっています。  
 これは何故かといいますと、一審判決(原判決)で敗訴した方が控訴をしようとするわけですが、仮に控訴期間中に控訴があったとしても、原判決が変更される可能性があったかが争点となり、その可能性がない又は非常に少ないという場合には、結局は原判決が維持確定するという同じ結果になりますので、損害はなかったということになるのです。   
 税理士過誤でも同様の問題があり、税務申告後に税務調査が入り増額修正された場合を例にあげますと、税務調査後の税額が本来支払うべき税額だとしますと、当初の申告が間違っていたとしても本来支払うべき税額を支払っただけですから、依頼者にはその点では損害はないことになります。   
 ただし、この場合は過少申告加算税や延滞税が加わりますが、これは当初から正しい申告がなされていれば支払わなくてよい金額ですので、損害になります。
 医療事件でも同じ問題があり、たとえば医療行為にミスがあって患者が死亡した場合で、その医療行為にミスが無かったとしてもやはりその患者は近接した時期に死亡していたと考えられる場合には、その医療行為のミスと患者の死亡との因果関係が否定されます。   
 緊急時の医療行為(救命救急など)の際によくみかける争点です。   
 ただし、医療訴訟の場合には、死亡との因果関係が否定される場合には、適切な医療行為をうけるという期待権というものを想定し、その期待権の侵害として一定の慰謝料が認められる傾向にあります。   
 私の知る限りでは、弁護士過誤等の専門家責任で期待権の侵害が認められた裁判例はないようですが、結果との因果関係が否定される場合、上記のような弁護士過誤の例では、医療過誤と同様にこの期待権の侵害という損害を認めてもよいのではないかと考えています。

丸橋 茂

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