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コラム

弁護士の丸橋です。

 当事務所で平成15年10月から勤務していました山田敬子弁護士が、このたび独立して事務所を開くことになりました。
山田弁護士の新しい事務所は以下の通りです。(Our Fellowsにも、山田弁護士の新事務所を掲載しています)
当事務所ともども、山田弁護士の新事務所にもご支援いただきますようお願いします。
(山田敬子弁護士の事務所)
  名称 さくら北浜法律事務所
  住所 大阪市中央区平野町1丁目7−3 ブラービ北浜5F
  電話 06−4708−7788
  FAX 06−4708−7756

1.当事務所では、この約3年間で4件の公開会社(上場企業)を対象とした企業買収(M&A)に関与しました。
 大阪で、かつ当事務所の規模で、4件もの上場企業を対象にした企業買収に関与できたことは貴重な経験だったと思います。
企業買収又は企業への出資・提携などは、従来から相談をうけていました。
ただ、これらは非公開会社が対象であり、その中には年商数十億円規模の企業もありましたが、大半は年商数億円までの企業であり、年商数千万円というものもありました。
上場企業を対象にした企業買収は上記のこの3年の4件だけです。
そこで今回は、企業買収における弁護士の役割と、買収対象会社が公開会社と非公開会社でどのような実務上の差異があるかを中心にお話ししたいと思います。

2.企業買収と資産査定(デューデリジェンス)の関係
 企業買収は、大雑把にいって、資産査定と買収交渉又は買収判断の2つの過程に区分できると思います。
 資産査定というのは、財務内容を中心に対象企業を調査して買収判断の前提となる事実認識を形成することです。
 わかりやすく言えば、現在どのような財務状況、経営状況にあり、またどのような契約関係、労働関係をむすんでいるか、その中に将来のリスク(すでに現実化しているリスクも当然含みます)があるか、あるとしてどの程度のリスクか、などその企業の価値を判定するための事実関係を調査するわけです。
 そして買収側の経営陣は、資産査定の結果をふまえて、買収するかどうか、買収するとしてどの程度の買収価格まで許容できるか、などを判断することになります。
 後者は、企業経営者の経営判断の問題であり、弁護士が関与するのは通常は前者の資産査定です。
 現実に上場会社を対象にした企業買収の内3件は、資産査定のみに関与しました。
 もちろん、資産査定と買収判断等は明確に切り離すことはできませんので、買収判断の過程で経営陣から質問やアドバイスを求められることはありましたが、それらは資産査定内容に対するものがほとんどで、それ以外にも経営判断に関する法律上のアドバイスは行いましたが、経営判断、買収判断自体に弁護士が関与することはありませんでした。
 ただし、上場企業対象のもう1件は、買収判断自体を経営者と協議し、買収交渉も経営者同席の上、私の方が主導して行いました。
 非公開会社の場合は、後で説明する事情もあり、後者の場合が増加すると思います。

3.資産査定の内容ついて
 上場企業を対象とする資産査定では、通常弁護士以外に監査法人又は監査法人系列のコンサルティング会社(つまり公認会計士及びその補助者)が資産査定を行います。
 通常は監査法人等の方が人数も多く、時間もかけていると思います。
 資産査定は、企業価値の判定のためのものですので、会計上のチェックが基本になるからです。
 上場企業対象の4件の内3件は、監査法人等が会計監査的な資産査定を行い、当事務所が法務監査的な資産査定を行いました。
 会計監査、法務監査といいますと、この2つは分離して独立に存在するように思われるかもしれません。
 他の法律事務所はどのようにしているかはわかりませんが、私が現実に行った法務監査的な資産査定は相当程度会計監査と連動していたと思います。
 これは私の個性なのでしょうが、私は資産査定をする際には、有価証券報告書、確定申告書、財務諸表などの会計資料から入ります。
これらの会計資料上の数字の正確性は、監査法人等がチェックする対象ですし、そもそも上場会社では通常から監査法人が会計監査をおこなっていますので、私はタッチしません。
 しかし、これらを追っていきますと、これは要注意だな、という数字、項目が発見されます。
 私の実体験では、関連会社や特別なプロジェクトとの関係で発見することが多かったと思います。
 それでそれらに関する会計資料や契約書を取り寄せて調査しますと、公表された決算書などには開示されていない不良債権やリスクが発見されることがあります。
 そういったものが発見された場合は、私の方で事実関係及び法律関係を整理してそのリスクを指摘したレポートを依頼者及び会監査法人に送ることになります。
 私の個人的な感想では、監査法人は全体をまんべんなく査定調査し、弁護士は主にアブノーマルな事象をピックアップしてそれを解明して査定調査する、という関係になるように思います。
 もちろん、各種契約関係や就業規則等の労働関係は弁護士の監査の領域ですからこちらで行いますが、上場会社特に行政庁の規制のある業種では、これらで一般的に使用されている契約書及び労働関係に明らかな問題点があることは少ないと思います。

4.非公開会社の買収
 当事務所が関与した上場会社を対象とする企業買収の内1件は、比較的規模が小さくかつ会社分割の手法によるものでしたので、監査法人等は関与せず、当事務所税理士の援助の下、当事務所だけで行いました。
 これは、監査法人等を依頼すると多額の費用がかかりますので、小規模の買収では採算があわないという面があるうえ、一応上場会社ですから日常的に監査法人の監査を受けているので、ルーティーンの部分の会計的な処理に問題があることは少ないであろうという判断がありました。
 この点が非公開会社とは異なるところです。
 非公開会社では、税務申告を行っているとはいえ、税務申告と会計監査は違います。
 たとえば、不良債権がある場合、会計監査では貸倒引当金の計上や貸倒損失の計上が求められますが、税務上では赤字企業や経営の苦しい企業ではそれらを計上しないことがよくあります。
 私がこれまで見た中でも、破産・倒産した相手先に対する売掛金が何年もそのまま資産として計上されていたり、経費で計上すべき出費を開発費用名目で資産として計上していたりした例があります。
 ただ、これらは会計上間違った計上ですが、決算書にあがっているものですので、決算書や会計資料を注意して確認すれば発見することができます。
 本当に怖いのは、決算書や会計資料にまったく上がっていない債務、つまり簿外債務です。
 これには、保証債務の場合(これは原則として決算書等には計上されません)と、故意に隠している債務などがあります。
 これは買収対象先が秘匿して資料を開示しなければ、発見することは困難です。
 それで非公開会社の場合は、このような簿外債務のリスクを回避する方法を考えなければなりません。もちろん簿外債務以外のリスクも回避する必要があるのですが、典型的なものが簿外債務ですので、それを前提にします。
 一つの方法は、非公開会社のオーナーである株主に、買収後簿外債務等の隠れた債務が現実化した場合にその賠償又は補償義務を負担してもらうことです。
 買収契約の当事者は買収対象企業ではなくそのオーナーである株主ですので、買収契約にそのような義務を記載するわけです。
 これは有効な方法ですが、オーナーたる株主の資力がなければ、契約上の義務を負担させても現実には履行をうけることは困難ですし、オーナーたる株主が拒否すれば訴訟等によらなければなりません。
 これの変形として、買収代金の一部支払を一定期間保留して、その期間中に問題が発生しなければ保留した金額を支払うという方法もあります。
 これらとは全く別のリスク回避方法として私が推奨したいのは、会社分割を利用した企業買収です。
 相続対策の時も会社分割を利用した方法をあげていますので、またか、と思われるかも知れませんが、これは有効な方法なのです。
 会社分割(企業買収の場合は新設分割ではなく、吸収分割を利用することが多いと思います)の利点は、買収により承継する資産・負債・契約関係を特定できることです。
 オーナー株主から株式を購入する企業買収は、株主がかわるだけで買収対象企業自体はそのままですので、買収対象企業の債権債務関係は従前のままであり、簿外債務その他もそのまま残ります。
 買収する企業は、そのような会社を丸ごと買ったことになります。
 これに対して会社分割の場合は、買収する企業が承継する資産・債務・契約関係を特定し、承継対象に含まれない資産・債務・契約関係は承継しません。承継対象に含まれない資産・負債・契約関係は、分割会社(買収対象企業)がそのまま保有し、分割承継会社(吸収分割であれば買収する企業)から切り離されます。
 もちろん、承継する契約関係等に簿外債務が潜んでいる可能性は否定できませんので、絶対に安全とまでは言いませんが、承継する資産・負債・契約関係という制限された範囲で調査確認を行えば済むわけですので、リスクは大幅に減少します。
 本項の当初に、比較的小規模な上場会社買収で監査法人等が関与しなかったケースについて、「会社分割の手法によるものでしたので」と記載したのは、このためです。
 非公開会社の場合は、より一層、会社分割の方法で買収対象企業の隠れたリスクを遮断する必要があります。
 ただし、会社分割の方法による場合は、会社分割手続の費用及び手続・時間の負担はありますが、リスク回避の効果に比べれば少ない負担ですので、強くお勧めするものです。

丸橋 茂

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