1. 前回のコラムから約1年が経過しました。
 2019年1月から一津屋弁護士がパートナー(共同経営者)になり、それにあわせて事務所の改装を行いました。
 明るくしゃれた雰囲気になったとお客様からお褒めの言葉をいただいております。
 また、一津屋弁護士が離婚問題のホームページを別に作成しました。
 この事務所のホームページのトップページからリンクできますので、離婚問題に関心のある方は、一度ご覧ください。
 村岡悠子弁護士は6月から事務所を変わり、現在はさくら北浜法律事務所(06-4708-7788)に所属しています。
 村岡弁護士とは、現在もいくつかの事件を共同で行っています。



2. さて、今回はマンション管理問題について、お話ししたいと思います。
 なお、ここでお話しするマンション管理問題とは、分譲マンションの管理組合を対象にしたマンション管理の問題であり、賃貸マンションの管理の問題ではありませんので、ご了承ください。
 マンション管理の問題は、大雑把に分けますと、発生件数の多い順番で、①管理費の滞納問題、➁住民間又は住民と管理組合の問題、③マンション外の第三者との問題、の3つに大別できると思います。



3. 管理費の滞納問題
ⅰ 昨年、多くのマンション管理組合が加入している団体で講演を依頼された際、困った住民の対処法という題名で講演をしましたが、出席者の複数の方から、管理費の滞納をどうするかという講演をしてほしかった、と言われました。
 それほど、管理費の滞納はどのマンションでも恒常的に発生している問題です。
 管理費の滞納は、嫌がらせや滞納している方の性格等で発生することもありますが、ほとんどは支払能力が不足していることが原因です。
 生活費、住宅ローン、管理費のすべてを支払えない場合、生活費はもちろん必要ですし、住宅ローンを支払わなければ競売にかかりますので、まず管理費の支払いを止めるようです。

ⅱ 管理費の滞納が少額にとどまっている場合は、管理組合又は管理組合が契約している管理会社からの催促で解決する場合がありますが、私らが相談・依頼をうける事案では100万円以上の管理費の滞納が多く、数百万円という事案もありました。
 このような事案では、当該区分所有部分の登記簿を調べると多額の抵当権が設定されていることが多く、住宅ローン以外の複数の抵当権がついている場合もあります。
 滞納管理費については、支払を求めて訴訟を提起することができますし、先取特権を行使して訴訟手続きを経ずに当該区分所有権の差押えをすることができます。
 先取特権は訴訟手続きを経ずに当該区分所有権の差押え(競売)ができるという利点がありますが、滞納額が少額の場合多額の費用を要する不動産競売までするかという問題があり、また多額の抵当権がある物件で抵当権の被担保債権額(ローン残高)が物件価格を上回る場合は競売請求が却下されること、当該区分所有権以外には先取特権による請求はできないことから、私は滞納管理費の請求に際して、先取特権を利用したことはありません。
 それで通常は滞納管理費の支払いを求めて訴訟を提起し、訴訟上の和解で任意に支払っていただくか、判決をえて給料その他の財産を差し押さえることになります。
 しかしながら、数百万円もの管理費を滞納している方は、きちんとした生計をもっておらず、当該区分所有権以外に財産を持っておらず、また今回民事執行法が改正され債務者の財産を調査することが以前よりは楽にはなりますが、隠し財産を調査することはやはり難しいことから、現実には判決を取得しても回収が難しいのが現状です。

ⅲ ではこのような場合はどうするかといいますと、一番良いのは、ともかく競売に持ち込むことです。
 何故、競売に持ち込むのが良いのかといいますと、競売自体による回収を期待しているのではなく、競落した方から回収が期待できるからです。
 区分所有法8条により、管理費等の滞納がある区分所有権を取得した方は、前区分所有者の滞納管理費債務を承継しますので、競落された方(普通に購入された方も同じです)は前区分所有者の滞納管理費債務を支払わねばならないのです。
 これは区分所有法独自の制度で、このことを知らない方も多数おられます。
 私の経験では、不動産業者で知らない方がおられました。
 ちなみに、分譲マンションの売買で不動産業者が仲介に入る場合には、管理費の滞納があるかは重要事項として買主に説する義務があり、競売の場合も管理費の滞納の有無は競売の際に開示される資料に記載されています。
 競売の場合の競売価格(昔で言うところの最低競売価格)は、競落者が承継する滞納管理費債務も考慮して決定されています。

ⅳ 次にどうやって競売に持ち込むかです。
 判決をとりましても、被担保債権額が物件価格を上回る場合、競売請求は却下されます。
 これは競売申立人に配当される可能性がありませんので、そのような場合に優先する担保権者の意思に反して競売を行う必要が無いと考えられているからです。
 申立債権者に配当される可能性がある場合(私は、剰余がある場合とよんでいます)には競売が可能ですので、競売を申し立てます。
 剰余がない場合、私は、抵当権の登記をみて、抵当権者である銀行の預金口座を差し押さえます。
 この場合、預金口座を差し押さえても、その預金口座からの回収は期待できません。
 なぜなら、その銀行も滞納している区分所有者の債権者ですので、預金の差押えがあれば、優先して預金と自己の債権を相殺するからです。
 それなのに何故預金口座を差押えするのかといいますと、差押えは銀行借入の期限の利益喪失条項に該当しますので、ローン残高を全額一度に支払う義務が生じ、銀行が競売申立に入る可能性が高くなるからです。

ⅴ それでも、銀行が競売申立にすすまない場合は、最後の手段をとることになります。
 それが、区分所有法59条の競売請求です。
 区分所有法59条は、非常に省略して説明しますと、ある区分所有者がマンション住民の共同の利益に著しく反する行為があり、その行為をやめせるには競売以外に方法がない場合は、競売ができるという規定です。
 これは、いわばその区分所有者をそのマンションから追放するということですから、要件が厳しいのですが、長期多額にわたる管理費の滞納の場合、競売請求を認める裁判例があり、私も少なくとも3件判決を取得しています。
 この場合の競売は、債権者が行う競売(強制競売といます)とは区別され、形式競売と言われており、共有物分割などと同じく、債権回収のためではなく、区分所有者の追放、共有不動産の解消などの法律上の目的のために認められたものです。
 そして、この場合には、剰余がない場合でも競売が認められていますので、抵当権が一杯ついていても競売ができるのです。
 なお、先に書きましたように、形式競売でも滞納管理費債務が承継され、その債務承継をも考慮して競売価格が決まりますので、多額の管理費滞納がある物件の競売価格は安くなり、管理組合は競落人から回収できますので、結果的に抵当権者よりも有利な回収ができることになります。



4. ➁と③も説明するつもりでしたが、この段階で予定よりも長くなってしまいましたので、➁と③はまた次の機会に説明させていただきます。


以上
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